パウンドケーキ備忘録
材料の調達
全国各地の材料がネットで買える便利な世の中。あらゆる地方から取り寄せてパウンドケーキにしましたが、 たくさん試した結果以下の材料に絞りました。喫茶店内で提供されるまで、紆余曲折しながらたどり着いた素材です。
小麦粉
調達のしやすさや、種類の多さを考慮すると、北海道産にかたよっております。
ゆきんこ【北海道】
とてもくちどけが良いです。小麦でんぷんを10%程度加えられている薄力粉だそうで、パウンドケーキよりは スポンジケーキ、またはシフォンケーキにとてもよく合いそうです。とにかく軽い仕上がり。 バタークリームを挟むと、商品化できそう。
ドルチェ【北海道】
製菓では有名な薄力粉ですね。どの焼き菓子にもオールマイティーに使える魔法の粉という認識でした。 仕上がりの感想は、しっとりしていて、ホロホロでもある、とても良いです。 バターの風味も損なわず、砂糖の特徴もよくわかります。
ファリーㇴ【北海道】
外国産小麦の薄力粉と近い感覚と謳われていました。とても軽い仕上がりです。シフォンケーキに適しているのかな。 小麦の風味は控えめなので、生地自体を楽しむよりも、チョコやフルーツを練り込む生地に向いていると思います。 その分、バターや砂糖の味がよくわかるのが利点ではあります。
クーヘン【北海道】adoraではコレ
これは、焼く前から粉自体の風味が一番強いと感じました。焼き上がりはほのかに酸味のある香がします。 スコーンやクッキーに最適だと聞いておりましたが、主観では、理想としている昔ながらのパウンドケーキにとても近いです。 どっしりしてほろほろ。昭和のパウンドケーキ。当分はこれで焼く予定です。
バター
初めは価格度外視でいろんな地方のバターを取り寄せていましたが、、、、 手に入りやすさも考慮して定番のバターにしました。この4つでも確かに風味に違いがあり、 研究とはいえとても楽しいです。
よつ葉バター
ミルクの風味とコクが非常に豊かです。 これがパウンドケーキに凝縮され、深みのある味わいになりました。 乳酸菌で発酵させた独特の芳醇な香りとほのかな酸味が加わり、より深みのあるリッチな風味のパウンドケーキになりましたした。
カルピスバター
カルピスを製造する過程で得られる乳脂肪から作られるため、独特の風味があります。 濃厚でありながら、後味は驚くほどすっきりとしていて、バター特有の「重さ」や「くどさ」を感じさせません。 クセが少ないため、パウンドケーキに入れる他の素材(フルーツ、ナッツ、チョコレートなど)の風味を邪魔せず、むしろそれらをより一層引き立てます。 シンプルにバターの風味を味わうパウンドケーキはもちろん、様々なフレーバーのパウンドケーキにも適している印象です。
森永バターadoraではコレ
突出した強い風味はありません。そのため、他の材料の風味を邪魔せず、パウンドケーキ全体のバランスを保ちやすいです。 適度なコクがあり、バターらしい風味はしっかりと感じられます。 よつ葉バターやカルピスバターのような「特別感」や「濃厚さ」は控えめですが、昭和のパウンドケーキとして親しみやすい味わいに仕上がりましたした。
明治バター
森永バターと同様に、比較的クセが少なく、万能に使えるバターです。 パウンドケーキに、しっとりとした口当たりと、ほどよい重厚感を与えます。 バターらしいしっかりとしたコクがありながら、後味が重すぎないため、食べやすいパウンドケーキに仕上がりましたした。
砂糖
砂糖の違いは料理に使う塩と同等に本当に豊富で、違いもはっきりわかります。 あくまでも好みになってしまいますが、バターとの相性で決めています。
上白糖
甘みが強く、しっとりした仕上がりになりました。
グラニュー糖
さっぱりとした甘み。小麦やバターの風味が引き立ちます。
三温糖adoraではコレ
上白糖よりもさらに甘みが強く、深い印象です。同じくしっとりし仕上がりました。
きび砂糖
上記3つの砂糖よりもコクのある甘みです。
黒砂糖
コクが強く、独自の風味があるゆえ、バターや小麦の風味が弱くなってしまいます。 「黒糖パウンドケーキ」と、別物とした方が良さそうです。とてもおいしい。
生地の作り方3種
生地の混ぜ方、混ぜる順番で、焼き上がりの状態、風味も変わります。完全に好みだと思いますが、 懐かしいどっしりしたパウンドケーキを目指しているので、当店では共立て法を採用することにしました。
共立て法adoraではコレ
卵とその他の材料を全て同じく混ぜる方法です
口当たりは、ほろりと崩れる食感。理想のパウンドケーキに見るどっしり感。 近年では軽い口当たりが好まれるようですが、adoraが目指す昔ながらのパウンドケーキは、 いかにもカロリーが高そうな"どっしり"と"しっとり"が共存していました。これですね。
別立て法
卵を卵黄と卵白に分け、卵白はメレンゲ上にしたうえで交互に混ぜる方法です
どっしりとしてますが、しっとり感が少ない。さっくりと美味しいです。 気泡がまばらになりがちでした。味はとてもおいしいのですが、メレンゲとの合わせ具合で 焼き上がりにばらつきいが出てしまうので、却下となりました。
ジェノワーズ法
卵と砂糖でしっかり空気を含ませて白っぽくなるまで泡立てたのちに溶かしバターをっ加えます。 スポンジケーキを作るときの方法です。
やはりスポンジケーキに近い仕上がりになりました。パウンドケーキ特有のしっとり、どっしり感はありません。 とても軽くてふんわりしています。高さも出ました。生クリームを添えて食べたいです。
これまでたくさんの素材同士を組み合わせてパウンドケーキを焼きました。今、喫茶店adoraで提供しているものが現時点でのベストです。 身近な知人や、身内、時にはお客様からフィードバックをしてもらい、たどり着きました。しかし、薄力粉×バター×砂糖の組み合わせは無限大です。 日本には、まだ試したことのない薄力粉もバターも砂糖もあります。さらに良いものが見つかるかもしれません。 パウンドケーキ=薄力粉という固定概念を捨てて、強力粉や中力粉を使って(混ぜて)の組み合わせも面白いかもしれません。 パウンドケーキとは違った何かが誕生するかもしれません。
最終地点(そういうものがあれば)まではまだ遠いのかもしれません。だからお菓子作りは楽しいのです。